2018年2月 【第二話】ヒポクラテスと漢方

■第二話:ヒポクラテスと漢方■

漢方を理解するために重要な考え方は、「ヒポクラテスの誓い」で医師に高い倫理性を求めた「医学の父」「医聖」と呼ばれるヒポクラテスの思想の中にあります。

「ヒポクラテスの誓い」には、*金銭欲を持たない事*自重*羞恥*節度ある身なり*純粋*人生に有益かつ不可欠なものを知ること*悪徳行為回避*迷信からの自由*神的高潔、などが医道として大切なこととされています。

そして、その治療方は、健康と病気を自然の現象として合理的また理知的に観察し、医術を迷信から分離させただけでなく、人間を機械に見立てた解剖学を重要視せず、病気を特定の臓器と結びつけず、体全体を一つの有機体と考え、自然治癒力を最大限に生かした治療を行いました。

このヒポクラテスの医学、すなわちギリシャ医学の「コス派」(ヒポクラテスはエーゲ海に面したイオニア地方南端のコス島生まれ)と呼ばれる医学の一派が活躍していた頃、中国でも、中国最高の名医と言われる「扁鵲」が活躍し、医術を迷信から分離させました。この両者は、体全体を一つの有機体と考え、自然治癒力を最大限に生かすという、思想的に大変似た医療を行っていました。

また、ヒポクラテスや扁鵲の時代である紀元前300年頃から、紀元元年にかけて、中国最古の医学書で漢方の基本となり「天人合一」の思想をもつ「黄帝内経」が成立しました。

そして、この「黄帝内経」の思想を受け継いだ漢方の聖典「傷寒論」が張仲景により紀元200年頃に書かれ、後の漢方の基礎となり、現代に至るまで発展していったのです。

では、漢方や「医聖」であるヒポクラテスの思想とは、大きく異なる思想である現代の西洋医学はどこから始まり、なぜ現代医療の中心となったのでしょうか?